公開から半年以上も経過した映画『市子』の人気が絶えないのはなぜなのか? その理由、実は私たちの中にあった【小林久乃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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公開から半年以上も経過した映画『市子』の人気が絶えないのはなぜなのか? その理由、実は私たちの中にあった【小林久乃】

 

◾️市子の最期はどんなものだろうか

 

 鑑賞中、市子が逃げ走る姿を見ていたら、一人の人物を思い出した。殺人、逃亡犯だった福田和子(2005年没)だ。1982年に殺人事件を起こして、1997年に逮捕される。約15年間、逃げ回っている最中、いつも彼女には味方になってくれるパートナーがいた。それだけ魅力があったのだろう。特に石川県の和菓子屋の主人に見初められて、若女将のように働いていたエピソードは色濃い。主人からプロポーズも受けていたという。ただ周囲の警察への通報で、福田はまた逃亡する。着の身着の儘、自転車で逃げたというのは有名な話だ。

 市子と環境やスタートは違うけれど、この狭い日本国内を逃げ回っていたという事実が、私に二人の女性を彷彿させた。福田は逮捕から約五年後、まるで逃亡で知力体力を使い切ったかのように病死にて、獄中で人生の幕を下ろした。57歳のことだった。映画『市子』はフィクションであり、主人公も架空の人物ではある。もし、市子が実在する人物だとしたら、彼女はどんな最期を迎えるのだろうか。

 「きっと明日はいい天気」

  劇中で市子は童謡『虹』を口ずさんでいた。このワンフレーズが物悲しくもあり、彼女の最後を示しているようで、少し震えてしまった。そして映画『市子』が公開から全く色褪せることなく、むしろ色が深まりながら皆に愛されていく理由がわかった。それは観ている私たちも義則や北秀和(演:森永悠希 市子の高校時代の同級生)のように、市子の虜なのだ。

 

※映画『市子』はAmazonプライム・ビデオにて配信中。その他、上映映画館もあり。詳しくは公式サイトにて確認を

 

文:小林久乃(コラムニスト、編集者) 

 

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小林久乃

こばやし ひさの

コラムニスト、編集者

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(K Kベストセラーズ)にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊行)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーションなどを業とする、正々堂々の独身。最新情報はhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

 

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